青柳碧人著「浜村渚の計算ノート」


すでに「2さつめ」が出版されいてる、数学クイズをふんだんに盛り込んだ、エンターテイメント性に秀でた推理小説。まだそれほど知名度は高くないですが、いずれ映像化されても不思議ではないです。

数学が教育カリキュラムから外され、芸術に偏重した教材が重視される世界を舞台にし、数学を復興させようと旗を揚げた組織「黒い三角定規」と、数学教育を施されていない警察組織との対決を軸にしています。組織の提示する数学問題にお手上げ状態の警察は、ひとりの数学大好き中学生、浜村渚に協力を要請するところから物語は始まります。

面白い要素がたくさんあり、挙げることに暇を必要としません。数学好きの私として、是非とも全ての人にお勧めしたい二冊。最も唸ってしまったのは、「黒い三角定規」に所属するメンバーの潔さ。数学に従事し、数学を崇拝する彼らにとって、浜村渚が証明したことは、数学的に逆らえない完璧なものなので、自棄になって無論の潔白を訴えたりはしません。数学の導き出す結論はすべからく正しくあるべし、だからです。

まあ世の中から数学を奪ってしまえば、少なからず仕事にありつけなくなる人はいるはず。おまけに化学や物理もなくなってしまえば、当然自分の食い扶持も減ってしまうのです。そういう意味では、もしこの本のような世界が将来訪れてしまったら、自分は迷いなく「黒い三角定規」側に立ってしまうのでしょうか。

ちなみに、「にさつめ」のラストにてケーニヒスベルクの橋渡し問題が紹介されていました。7つの橋を、一回で全て渡る一筆書き問題なのですが、これは一般的に不可能とされています。
確か以前、マンガの「QED」だかでもこれが載っていて、「川の源泉まで上っていけば橋を渡らずに向こう岸へ渡れる」という解があり、なるほどなと感心したのを覚えています。ただのとんちですが、パンチ力はあります。
四隅をかたどられた限定領域では気づかないこともたくさんあります。頭の中で延長領域を生み出せるような人というのは、数学や国語や社会の垣根を越え、どんな世界でも渡っていける才能を持っているのでしょう。この本を読んでいるとそんな気にさせてくれます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。