小川洋子著「猫を抱いて象と泳ぐ」

小川洋子さんの作品を1年ぶりくらいに読破。長編となるとさらに久しいのではないかと。問答無用で好きな作家さんの一人なので、たぶんに色眼鏡をかけて感想を書いてしまうことになるのだけれど、やっぱ最高ですね小川さんは。ぐうの音も出ない。

小川さん作品は空想世界の色が濃く、現実味を感じない映像の中にリアルをあてがうイメージなのですが、今回の作品の場合それが真逆のように感じられました。つまり現実に忠実な世界の中で、幻想をふんだんにもりこんだ感じ。チェスを舞台にしていて、チェスの奥深さだだっ広さを海やら何やら幻想に例えているから、それを包む世界は現実味を帯びさせたのでしょうか。何はともあれ、少し今までと作風は異なる印象を受けました。それでもなお小川さんにしか到底書けない一作になっているのですが。

すんんんんんごい語弊を覚悟で書くのですが、マンガでいうところの「ハチワンダイバー」に近い作品です。いや勢いとか色合いはかけ離れているんですけどね。しかしハチワンも、将棋の広い世界へダイブするところがテーマの一つなわけで。本作品も、チェスの海に飛び込む、もしくは溶け込むところが象徴になっているのです。こちらが詩を読むのに対して、ハチワンはハードロックではありますが。

ラストはほんとあっさりなのですが、それがまた良い。内容についてとやかくいう必要はなく、何しろ小川さんの張った湖にいつまでも浮かんでいたい感じですよ。これに夢中になってしまった人は、いつまでも小川さんの虜でしょう。こういう作家さんは、現役ではなかなかいらっしゃらないと思います。

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