最近何かと物議をかもす吉本興業の一件では、契約書の取り交わしの重要性が再認識されていますね。
被雇用者と雇用者の間はもちろんのこと、どんなに些細なことでも、個人間であっても、約束を交わす際は、必ずデータとして残しておくべきでしょう。いざというときに大きな効力を発揮するはずです。
私はかつて、フリーランスになってまもない頃、ある大きめの案件が途中で頓挫してしまい、数十万円の損を被ったことがあります。個人事業で数十万円は、でかいですよね。駆け出しでしたから、かなり痛かったし、かなりへこみました。
あの経験以来、「データとして残さない口約束」の危うさを痛感しました。
そのときの出来事を振り返りつます。フリーランスをされている方、これからフリーランスになろうと励んでいる方の何かしらのお役に立てれば、あのときの苦労も報われます。もしくは単なる読み物として、「アホやな〜」と一笑に付していただくでも構いませんので、ご一読ください。
まずはダイジェスト
どんな出来事だったのかザックリとタイムラインでまずはまとめます。
- 起依頼が来るA社からの依頼で、中期的で報酬の大きめな案件が私の元へ。A社の発注で私が制作し、B社に納品して販売するという流れで固まる。
- 承制作を始める報酬は、着手金として半金、納品後にさらに残りの半金が入るという約束を、A社と口頭にて行う。企画書を作成し、B社も交えた打ち合わせ後、着手金が入る前に制作開始。
- 転まさかの延期A社から着手金が入らないのを気にしつつも、B社からは進捗の確認が都度来るので、制作に没頭。が、着手から2ヶ月くらい経過したところで、A社より「企画を延期してほしい」という突然の申し出が。
- 結ノーマネーでフィニッシュB社が説得するも埒が明かず。結局、延期という名の中止に。着手金の話もなかったことになっており、私には1円たりとも入らず。2ヶ月半くらいが無駄になる。泣く。
今こうして書いていてもツラいね。若かったねわたしゃ。
以下、事細かに気になる事を書き留めます。
なぜ、口頭だけで済ましたか
私には仕事を紹介してくれるOさんという知り合いがいて、その方の紹介にてA社とつながりを持ちました。
Oさんは本当に良い方で、今も一緒に仕事をすることが多いです。
そんな信頼できる方の紹介だったので、A社のことも全面的に信頼しました。また、OさんとB社も仲が良かったので、当然B社もA社を信頼できるところと感じていたことでしょう。
Oさん経由の仕事はそれまでもわりと約束事を口頭で済ますことが多く、それでもうまくいっていたので、今回も大半を口頭で済ましてしまいました。
今考えてみたらアホやな〜と思いますが、そんな訳で、口頭だけで済ましたのです。ハイ。
突然の延期の理由
これ、どこまで書いていいのか分からないんですけども、まあハッキリ書いちゃって大丈夫でしょう。
延期の理由は、私やB社やOさんに落ち度があったわけではありません。
今回の案件はA社に所属するある方にスポットを当てたものだったのですが、なんとその方が急にとある選挙に出馬することになっちゃったんです。
選挙に出馬となると、「公」ではない「私」の活動は禁じられます。
かつてタレントの横山ノックさんが選挙に出馬した際も、テレビ番組などの出演が一切できなくなり、名を冠していた番組「ノックは無用!」も「ロックは無用!」にタイトルが変更されていました。
これと同じ理由で、今回の案件がこれ以上動かせなくなったというのですよ。
いやいや、選挙に出るなら先に言ってくださいよって話ですよね。
口頭の契約にも効力がある
ここで本題ともいえる大事なことをひとつ。口頭の契約にも効力はあります。
ただし相手がしらばっくれたら事態はこじれます。弁護士を立てて調停、っていうのが法的な流れですかね。
ここまで行くにはさまざまな手続きが必要ですし、結局見込みとは程遠いお金しか入らない可能性もあります。何よりもお金より貴重な時間をたくさん浪費することになるので、あまり得策ではないんですよね。
BtoBで莫大なお金が絡んでいるなら別ですが、BtoCですし、金額もたかが知れてますから(私から見りゃ大金なんだけどね)。泣き寝入りするしかありませんでした。
B社やOさんの痛手は?
私と同様、B社ももちろん無駄骨を折りました。
ただ私のようにたくさんの時間を費やしたわけではないので、損失額としては大したことはないでしょう。販売スケジュールの調整が必要ではあったようですが。
B社はきちんとA社と取り交わしをしていたのですが、Oさん紹介の手前、事を荒立てたくないでしょうし、損失自体もそこまでではないので、穏便に矛を収めました。
Oさんも1円の利益もありませんでしたが、費やした時間は少量だったのでほぼ無傷。しかし私やB社には申し訳ないことをしたと、とても恐縮していました。
私のメンタル
しばらくボロボロでしたね。丸2ヶ月を無駄にしましたからね。
厳密には、当時並行で別件もやっていたんですが、こちらも正直稼ぎがいまいちで、内容も精神的に追い込まれる案件だったもんで、ハイブリッドでメンタルやられてましたよ。
いちばんしんどかったのはA社から「ほんとごめんね」的な短い謝罪の電話を最後に一切連絡が取れなくなったこと。会社としてどーのなのよって感じです。「世の中ってこんなもん?」と人間不信に陥るところでした。
会社の所在地も遠方だったこともあり、諦めるしかなかった。後ろを振り返るよりは前を見続けようと、次の仕事を開拓することに気持ちを切り替えるしかありませんでした。
怪我の功名
Oさんには謝られましたし、B社にもかなり同情されました。
罪滅ぼしと言わんばかりにOさんからは続々と仕事を紹介していただけましたし、B社とも縁を持ったことで仕事をいただく機会に恵まれました。
これらはまさに怪我の功名。ピンチの中にもチャンスは転がっているものですね。
目に見える記録を残せ!
しかしこの出来事、極めてポジティブにとらえれば、若いうちにできた貴重な経験だったなと。
以降私は徹底して、約束事はデータに残すようにしています。紙しかり、メールしかり、LINEやチャットなどの会話しかり、レコーダによる録音しかり。
そして、初めての方と大きめな仕事をする際は、必ず半金が入るのを見届けてから、本格着手に入るようにしています。
ちなみに紙の契約書は、ネットにあるテンプレートを自分用にいい感じにアレンジして使っています。検索すれば色々出てくるでしょう。
私の場合、印刷はコンビニでやっています。コピー機は持っていません。滅多に使いませんもの昨今は。1枚10円なので、契約書も1枚に収まるように作成しています。
この時間とお金の消費で、上記のような目には絶対遭わずに済みます。契約書や記録データなど目に見える証明さえあれば、有耶無耶にされることはありませんから。
フリーランスは自分で自分を守れ!
冒頭に戻りますが、どんな些細なことでも、データとして残しておきましょう。
親子の約束も、私はデータに残していこうと思っています。まだうちの子は幼いですが、たとえば将来こんな場面に遭遇したら……
宿題やりなさい!
アイス食べ終わったら〜
アイス食べても宿題やらなかったら、Switchのゲームを全部売るからな!
おけおけ〜
っていう会話もきっちり録音して、約束を守らなかったら速攻メルカリに出品します。後から責められても、録音を聴かしてぐうの音も出ない状況に追い込んでやるのです。裁判沙汰になっても私が勝ちます(たぶん)。
私はかなり嫌な父です。
でもそのくらい、徹底した方がいいと思います。フリーランスの方はとくに。親しき仲にあっても、ちゃんとするべきところはちゃんとしましょう。
結局最後に泣くのって末端、フリーランスなんです。守られていないからね、何者からも。
自分自身の力で、防御力を高めるしかありません。私の今回の話で皆さんにも疑似体験していただいて、これからの参考にしてください。
「テープ回してないやろな」って脅されても、絶対に記録は残しましょう!